あっという間にもうロシア!
新潟国際空港からすぐお隣りの国までたったの1時間45分のフライトだった。 ダリアビア航空310便は、お世辞にも新しい飛行機とは言えない。 乗り込む時、 「え!!コックピットって窓開くんだ…」 パイロットが、手で窓を開けていた。 すぐに訳がわかった。
そう、機内が暑いのだ。 乗客もうちわや扇子をパタパタさせている。空調の利いていない飛行機ははじめてだった。 おまけに機内の装備品などはすべてロシア語オンリー。 搭乗券の座席は、ABC,DEFなのに機内の座席はАБВ、ГДЕなのだ。 このロシアのアルファベットは曲者だ。英語に慣れ親しんでいるものにとっては、 下手に同じアルファベットがあるのでこんがらかる。 つまり、搭乗券のC席は、機内ではB席。F席と書かれている搭乗券を持っている人は、 E席に座らなくてはならない。みんなバタバタしている…。 しかし、暑い機内も機体の上昇と共に涼しくなってきた。 座席はボロボロ、ヘッドホーンどころか、ゴミ袋も付いてない。 トイレはと言うと…。行かない方がよかった。水が出ず、手が洗えない…。 まぁいい…。そうあっと言う間のフライトなのだから。無事にさえ着けば。
“幕の内弁当!!”これが機内食だった。コンパクトに配れるし、 なんと言っても新潟産の弁当なのだから御飯が美味しい! トンカツ、シャケ、サラダ、メロンどれも美味しく全部たいらげた。 お腹も満腹になり少し寝たいと言う気分になった頃にはもう飛行機は、下降していた。
機内の放送に耳を疑う。「地上の温度は現在29度です」「うっそー!」 ハバロフスクの今週の天気予報だと、最高温度24度、最低温度16度のはずなのに…。 しっかりカバンに入れてある上着を見ながらまだ信じられなかった。 でも…。飛行機を降りるとやはり暑かった。 もちろん東京に比べれば涼しい。でも、もう7時半だというのに太陽がギラギラ照っている。 ふぅー!
超丁寧な入国審査の後、預けた荷物を待つ…が、なかなか出てこない。 2人でスポーツバッグ1個を預けただけなので、私は先に外に出て、両替をする事にした。 100ドルで2440ルーブルもらえた。つまり、1ドル120円で日本円を両替していたので、 1ルーブルは、4.91円。約5円となる。 ルーブルの価値がまたどんどん下落し始めた事を実感する。
今回は、夜の到着だし、両替が出来ない場合、白タクと値段を交渉してホテルに行くのが大変そうだったので 空港からホテルまでの送迎を頼んであった。 最近行った香港や上海では、はじめてではなかったし都心まで簡単に行けるので、自分達で行ったが、 やはり、初めての都市、しかも言葉が通じないとなると、不安だった。 それに送迎を頼むと、ドライバーからいろいろな情報を聞けるのでメリットのある場合も多い。 しかし、このメリットはすぐにここでは無理だという事がわかった。
両替を済んだ私は、「Mr Akira Miyamoto,Ms Madoka Miyamoto」 というプラカードを持った男の人に近付き、「こんにちは、宮本です。今主人は荷物を待っていますので」 と英語で話しかけると…。
「???」という表情。「あのー、英語話しますか?」「ニィエット」 「???………」「ムッシュ?」「???………」
うわー!!全く通じてない。 急いで旅の会話集ロシア語編を取り出し、確認する。 そう「ニィエット」は「ノー」。 この「Het(ニィエット)」は、中国語の「没有(メイヨ−)」と同じくよく耳にするロシア語だ。 つまり、意味も同じ否定語で、“ありません、違います”などという意味だ。
ついでに露和辞典で「ムッシュ」が「主人」だという事がわかった。「ダー!!」もうお判りの通り、 私の頭の中にあった、ロシア語は「ダー(ハイ)」と「スパシーバ(ありがとう)」のみだった。
海外を旅する時は現地の言葉を少しでも知っていた方がよいに決まっているのだが、 中国は漢字がかなり役立つし、 トルコやベトナムなどでも、辞書片手に下手な発音で現地の言葉で尋ねたりするより、 英語を話す人を見つけた方が早かったせいもあって、今回は全くの予習無し!
しかし、これは大きな間違いだった。 ロシアで英語といえば、つい数年前まで、敵対国の言葉だったのだ。 外国人と接するドライバーさんでさえ、片言の英語も話さない人が多いのだ。
「英語を話さない」と「英語を話せない」では少しニュアンスが違う。 昔英語の先生に教えられた事がある。「Can you speak?」と聞いては、失礼になる。 「Do you speak English?」と聞きなさいと。 でも、でも、この後ホテルのフロントでも英語が全く通じない事を体験したので… 「ねぇ、少しは世界の共通語の英語、勉強したら? じゃないと、観光事業の発展が遅れるよ…!」 と言いたくなる。 「ロシアに来ているんだから、ロシア語勉強したら!」と言い返されそうだが!
まぁ何はともあれ、露和辞典と和露辞典で優しそうなドライバーさんと遊んでいるうちに、 主人もやっと合流。 このドライバーさんから2日後のハバロフスクからウラジオストックまでの汽車の切符を 受け取ることになっていたので、早速車に乗り込むと、切符を渡してもらった。
確認しようとしても、切符の上にはロシア語と数字だけ。ふぅー。 でもどうしても気掛かりな事があった。 15.08 12.10 という数字だ。15.08は8月15日だろう。よし!しかし、12.10は…。 私たちの汽車は夜行寝台19:05ハバロフスク発の予定。どこを探しても19.05はない。
暑い車の中で、必死に辞書を引くと、12の上の文字は、“時”。10の上の文字は、“分”。 「え!!12時10分発??」「ダー」という答え。 「そんな、じゃぁ夜中の1時56分にウラジオストックに着くの?」「………」 通じてない…。「もういいや、ホテルに行ってから聞こう」となったのだが…。
市の中心部にある、ツェントラ−リナヤホテルに到着すると、ドライバーさんが、 フロントに一緒に行ってくれた。 フロントといっても、おばさんが一人小さなブースの中に“でん!”っと座っているだけ。 先客有り。日本人の男性二人組。 私が、ホテルのバウチャ−(支払済み確認書)を出し、手続きをはじめると、 そばにいたドライバ−さんに「あのー、部屋がないって言われたんですが…」 って、日本語で話しかけた。 「この方、日本語、英語とも通じないですよ」っと言うと、「フロントも通じなくて…」と言った。
彼らの持っていたバウチャーは、日本ではかなり大手のロシア旅行の代理店をしているU社のだった。 しかし、現地手配の旅行社は、私たちと同じD社で、ちゃんと、PAID(支払済み)と書いてある。 でも、フロントのおばさんは、「ノールーム」とだけ英語で言っている。
私たちの手続きは終わったが、 「大変なとこ来ちゃったなぁー」と困っている二人組をほっておけず、ドライバーさんに、 バウチャーのD社の名前を指差して、 「ねぇ、私たちと同じ旅行会社よ。つまり、あなたの契約している会社よ。」 「ほら、ここにバウチャーって書いてあるでしょ」 と、通じないのわかってて英語で助けを求めた。 すると、フロントの人に何か言ってくれ、なんとその2人にも部屋番号の紙をくれた。
つまり、U社のバウチャーは、VOUCHERと小さく文の途中に書いてあるため、 フロントのおばさんにはわからなかった様だ。 その点、私たちの日本の代理店B社のバウチャーはとってもいい。 だって、一番上に大きな文字で“VOUCHER”と書いてある。
何はともあれ、「ノールーム」から一転して男性2人組はここのホテルの客になれた。 私たちがいなかったら、この2人組どうなっていただろう…。 普通は、ドライバーはホテルまでで、チェックインの手伝いはしなくてもよいのだ。だから、 彼らのドライバーもホテルで彼らを下ろすとそのまま帰ってしまったそうだ。 わたしたちのドライバーが親切な人だったからかはわからないが、仲良くなっていてよかった。
鍵は各階ごとにおばさんがいて、受け取る仕組みだ。 かなりのホテルで、昔からのこのやり方は変わってない様だ。 24時間エレベーターの前にはおばさんがいて、外出する度に鍵の受け渡しをする。大変な仕事だと思う。 普通フロントなども夜と昼とではスタッフが交替しているのだが、どうも1回24時間勤務なのか、 朝見た人と、夜、そして次の早朝まで同じ人だった。
部屋はというと、レーニン広場に面していて眺めのいい部屋だった。 しかし、夜の8時半だというのに西日が当たっていてサウナ状態。 「ひぇ〜〜〜!クーラーがないのは大変だ…」
急いで、窓を開ける。蚊が入ってくるかもなんて言ってられない。 一応ボロボロだが冷蔵庫がある。 廊下にいるおばさんを手招きして、冷蔵庫のコンセントの場所を教えてもらう。 私たちの“暑い、暑い”のジェスチャーにおばさんは、 “廊下のドアも開けといたら…”のジェスチャー。“うん!そうする。” 結構楽しそうなおばさんだ。
とにかくシャワーを浴びる事にする。お湯事情は悪いと聞いていたのだが、すぐにお湯はでた。 バスタブもある。もちろん、栓やシャワーカーテンはない。 上海では、フロントに電話して、シャワーカーテンを付けてもらったり、 ドライヤーを持って来てもらったりしたが、そんな事出来るはずがない。 まぁ、仮に英語が通じたとしてもそんなサービスはなさそうだった。 だって、シャンプー、リンスどころか、石鹸すらないのだから…。
“し、しまった!”すっかり、忘れていた。3年前トルコに行く途中で泊まったモスクワのホテルにも シャンプーなどなかった事を…。 普通、お洒落な人や、品質にこだわる日本人は、海外旅行の時にも自分の普段使っているシャンプー、 リンスを持って行くというが、余りこだわらない私は、どうせ、水が違うと余り泡立たなかったりするし、 少しでも荷物を減らすため持ち歩かない主義だ。 ただ、救いだったのは、今回シベリア鉄道で1泊するので、どこかでもらった、 サンプルの化粧石鹸を持って来ていた。 ふぅ…!
しかし、ロシアの名誉のために付け加えると、高級ホテルにはちゃんとアメニティグッズが置いてある様だ。 私たちが泊まったホテルは、日本の代理店を通して泊まれるホテルとしては、一番安いホテルだ。 それでも、1泊8、500円(ツィンルーム)する。
普通、物価の安い国に行けば、超豪華なホテルにこの値段で泊まれるのだが…。 ゴールデンウィークに行った上海のホテルなんて、上海駅前なのに1泊4、800円で、豪華なホテルだった。 個人で泊まると、フロントには120ドル(15、000円)と書かれていたが、 日本でクーポンを買っていったら、 3分の1の価格だった。
だが、ここロシアでは全く逆! 現地で直接泊まれば、3分の1の値段だ。いやもっと安い様だった。 しかし、観光ビザを取る為には、あらかじめ日本の代理店を通してロシアの旅行会社にホテル、 汽車などすべて支払済みの証明書がないとだめな仕組みだから、どうしようもない。 でも、住めば都。このホテルはなんと言っても場所がいい。
回りが、明るい。よく日本人が泊まる、“インツーリストホテル”は、少し歩かないとメイン通りは出られないし フロントだって、英語が通じるのは感動ものだったが、大してきれいでない。 1泊¥26、500.−も出して日本のビジネスクラス並みの“サッポロホテル”に泊まる人が いるなんて信じられない。
暑かったのは誤算だったが、夜中には気温も下がり、明け方なんて、窓を閉めようかと思ったほど。 蚊もそんなにいないし、錆臭い水だって、カビ臭い水よりはましだし、 一晩中モーターが入ったり止まったりしてうるさかった割には、朝起きてみたら 全く冷えてなかった冷蔵庫も何故か2日目には、冷える様になってたし。
シャワーを一浴びした後、早速街を探検してみる事にした。 9時でも明るいのには抵抗があったが、観光にはもってこいの条件だ。 やはり、暗い中を出歩くのは危険が伴うし。 汽車の切符の問題を解決する為に、旅行会社D社の場所だけでも確認しておこうと思ったが、 そうは簡単に見つかる訳はない。 ただ、出発前にアムールホテルの近くという事だけ聞いてあった。
あたりが、10時ともなると暗くなってきたので、今日はあきらめホテルにコーラを買って帰る。 コカコーラーはほんとに世界中どこでもある。 500mlのペットボトルで8ルーブル(40円)。 ロシア製ビール1ビン、11ルーブル(55円)。 私には、日本から持ってきたアイスコーヒー1リットルが頼り。ムフゥ! どんなに重たくたっていいの!これだけは。世界中どこへ行ってもこれは買えない。 炭酸飲料の嫌いな私には飲みたい物がいつも売っていない。 これが終わったら、後はインスタントコーヒーとティーパックで自分で作るのさ!
“あ〜、疲れた。おやすみなさい!” と、かくして1日目は何とか無事終了!
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