エ コ ノ ミ ー ク ラ ス “ ホ テ ル ” の ス タ ン ダ ー ド タ イ プ

 

 

 飛行機の旅、初日のいささかの緊張感からの疲れと共に、クルージングから戻ると、

シャワーを浴びて早々にベッドでバタンキユー。

 

 何やら人の話し声、“もう朝なのかなぁ”。でも時計を見るとまだ2時。当然暗い。

どうやら外に飲み屋があり騒いでいるらしい。“うるさいなぁ”と思いつつもウトウト。しかし、私の枕の横にある冷蔵庫。

これがまたくせもの。10分おきにモーターが入ったり、止まったりする。それも並大抵の止まり方ではない。

“車体”いや“庫体”を“ブルルルッ”と震わせて轟音と共に止まる。おまけに、エアコンの音もうるさい。

気になり出すと、とても気になって眠れない。

 そして、外が段々白みはじめるまでに、私の頭の中には、いろいろな考えが、走馬燈のように駆け巡る。

それは、旅行の申し込み段階から遡る。

 

 今までの旅行の経験から、日本の旅行会社が使用しているホテルは、一番安いツアーのエコノミークラスであっても、日本のそん所そこらのホテルよりずっと広く、綺麗であり、殆どホテルに寝に帰るだけの私たちにとっては、十二分だと言う事がわかっていた。

 だから、今回も当然、一番安いエコノミークラスのホテルを予約した。ただ、暑いベトナムだから、部屋に冷蔵庫が欲しかった。

冷蔵庫はどんなにそこの地で良いランクのホテルでもあるとは限らない。

インドのアグラでは、デラックスクラスのホテルだったのに、冷蔵庫はなかった。 

そこで、私は、「サイゴンホテルには、冷蔵庫がありますか?」とピース・イン・ツアーの島村さんに尋ねると、「ありますよ」の答え。

“ホットした”。が、あるガイドブックに、“サイゴンホテルで冷蔵庫があるのは一部。”

と書かれているのを見付けてしまった私は、また不安になり、

「島村さん。私たちが泊まる部屋は大丈夫かしら。」

「大丈夫ですよ。うちが予約するホテルは、エコノミークラスのホテルでも フ ァ ー ス ト ク ラ ス タ イ プ以上の部屋ですから。それ以下だとお客さんからクレームが来る事があるので。」と言われ安心した。

 

 頭の中でいろいろな考えが…。“冷蔵庫もあるのだから、この部屋が、サイゴンホテルのファーストクラスなのだろう。

でも、バスルームの壁はかびているし、この4Fは廊下もクーラーが効いてなく、反対側は、改装工事中。

もしかしたら、ダブルベッドの部屋から変えてもらったのでランクを落とされたのでは…。

そうだ、きっとそうに違いない。ダブルベッドの部屋はあんなに綺麗だったのだから。

おまけに、ホテルの前が建築中で、夜中でも重機の音がしているし、5時前から、前のイスラム教のモスクから、スピーカーでお祈りが始まって…。

 

 “よし、朝になったら、フロントに行って、この部屋がファーストクラスかどうか聞いてみよう。”と考えた。

その一方で、“クーラー、冷蔵庫もぼろいがちゃんと在るのだし、どうでもいいが、TVまであるのだから、ぜいたく言っちゃいけない。”とも思った。何と言っても、エコノミークラスのホテルにしたのは、この私だし、旅行会社にも、

“クーラー、冷蔵庫、シャーワーさえあれば十分です。”と言っていた。 頭の中で目が回りそう。

 

  よ く い る ん で す よ 。 こ う い う 人 。

自分で、一番安いツアーに参加していながら、やれ“部屋が古いだの、サービスが悪い、食事がまずいだの”、不平不満を添乗員に言って困らせる人。

 “文句言うんなら、初めからデラックスツアーに参加してよね。”って、添乗員の代わりに言ってあげたくなる。

もしそう思っても、愚痴ったところで何か面白くなるわけではないのだし、回りの人までを不愉快にするだけだ。

デラックスツアーに参加しているのなら、言う権利もあるだろうが。“物事なんでもプラス指向に考えないと損だよ。”

 

  だ 、 だ け ど … 。フロントに、この部屋がファーストクラスかどうか聞くぐらいいいよね。

誰に迷惑かかるわけではないし・・・・。

 明るくなるまで、小さな古〜い螢光電燈のスタンドをつけて、眠れなくなってしまった私は、8枚もの絵葉書を書いた。

 

 朝、6時になるとともに、そーっとへやを抜け出し、フロントへ。

フロントの女性に、せいいっぱいの笑顔で、「Good morning」と言うと、

(本当は、寝不足で全然“Good”ではない)愛想のない声で、「Good morning」と。

ここのフロントの女性は、愛想ないとは思っていたが、朝ぐらい、“もっとにこやかにしたっていいんじゃない。”ぶすっ。

 

「ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが、私たちの411号室は、ファーストクラスですか?」

「 ス タ ン ダ ー ド で す 。 」 「 え っ 、 や 、 や っ ぱ り 」

私は、クーラーと冷蔵庫の音がうるさくて眠れなかったことを悲しそーに言うと、すぐに

「わかりました。あと2泊するのですよね。部屋を替えましょう。」と言ってくれた。

私はとっても嬉しくなって、「じゃ、荷物はまとめてドアの近くに置いておけばいいですよね、今日は、夜まで出かけてしまうので。でも、とても嬉しいです。日本の旅行会社の人に、サイゴンホテルのファーストクラスに泊まれると聞いていたので。」と言った。

(つもりだ。)“つもり”と言うのは、日本語が、通じるわけがなく、私の乏しい英語力を総動員させたわけだから。

 

 後になって考えれば、彼女は、私が言った、“クーラーと冷蔵庫の音がうるさくて”と言う部分を聞き、“部屋を変えましょう”と返答したのであって、“ファーストクラスに替えてあげます”と言ったわけではなかったのだが…。

 

 「ねぇねぇ、部屋を替えてくれるって。やっぱり、この部屋はファーストクラスじゃなく、スタンダードタイプだったのよ。」

と7時になると同時に、主人に報告。そんなやりとりを全く知らない彼は、

「どういう風に言ったの?」「えーとね、XXXXって」と半ば勝ち誇った将軍のように言った。 “ や っ た ー ” 私の、いや私たちの頭の中には、今日の夜戻ってきたら、ずっと良い部屋が用意されていると、勝手に思い込んでいた。

 

 以前、上海に滞在していたとき、こちらからは何もいってないのに、現地の旅行会社のガイドさんが電話で、

「お部屋はいかがですか?。眺めはいいですか?」と聞かれ、正直に、「眺めは向かいの部屋が見えるだけですが」と答えたら、

「そうですか。では、南京東路と、黄浦江が見える部屋に替えてもらえるようリクエストします」といわれ、

ワンランク上と思われる部屋に替えてもらった事も頭の中によぎっていた。

 

 

 

 

カ オ ダ イ 教 と ク チ ト ン ネ ル 1 日 ツ ア ー

 

 昨日申し込んだ、“シン・カフェ”のカオダイ教とクチトンネル1日ツアーに参加。

集合は、シン・カフェ裏のシン・カフェUに9時。大型バス2台。1台に30〜40人。ガイドと運転手、そのほかもう一人のベトナム人。私たちのバスには、日本人が、5〜6人。“地球の歩き方”の影響力は強い。

あとは、西洋人。国籍はばらばらのようだ。

 

 ガイドが今日の日程などを話しながらバスは北へ走った。私たちは、バスの左側に座った。

というのは、昨晩、眠れない中、“カオダイ教のあるタイニン省とクチトンネルはホーチミンから見ると北のほうにある。

とすると、朝は、太陽が、バスの右側からさし、午後、帰路はやはり、右側に夕日が差し込むはずだ。

ゆえに、バスは左側に座る方が暑くない。

 

 “えっ、そこまで考えるのかって?”考えるのはタダですから。  

 4 ド ルしかしない、1日ツアーのバスにエアコンがあるのは驚いたが、韓国製の第二の余生をベトナムで送っているバスなのだから、エアコンの効きは、日が昇ると共に悪くなってきた。

太陽は当然右側から差し込んでいる。 ” ム フ フ 、 左 側 、 大 正 解 。 ”

 

カ オ ダ イ 教 というのは、ホーチミンから100Kmのカンボジアと国境を接するタイニン省の省都にある、ベトナムの新興宗教。

人類を救済する為、地球上の宗教を統一しようという思想が信仰の中心になっているらしい。

これだけ聞くと、なんか、“あの宗教”のようだが、もちろんその様なことはなく、ガイドによると、ここカオダイ教地区は、泥棒も騙しもない、聖域だそうだ。どんな人でも、快く受け入れる、心穏やかな信者ばかりだそうだ。

そう言えば、12時からの礼拝を見学したが、入場料なるものもなく、カメラ撮影も自由。この紀行文の表紙の写真もここで撮影したものだ。

礼拝が終わったばかりの信者の女性たちに撮影をお願いしたところ、気持ち良く応じてくれた。

 

 カオダイ教の建物は、どれも派手で、カラフルだ。

ただ、他の旅行会社が、殆どクチトンネルだけの半日ツアーなのに対して、このシン・カフェツアーはなぜカオダイ教の見学が組み込まれているのか、わからなかった。案内したところで、何かの利益になるわけでもない。

ただ、珍しいカラフルな建物と、心穏やかな信者ばかりの聖域を見せたかったのかもしれない。

もちろん、需要も多いのだろう。かなり、時間も取ってあった。

ツアーの案内書には、“カオダイ教、寺院内の見学には、短パン、ノースリーブでは入れません”と書いてある。

(実際には何も制限なかったが)

 

 次に ク チ ト ン ネ ルヘ。

 

 クチの町から30Km離れたところに掘られたこのトンネルは、ベトナム戦争当時、解放戦線の拠点として、重要な役目を果たした。何と総距離250Km。これを全部手で掘ったと言うのだから凄い。

アメリカ軍も、後にあのベト君・ドク君のようなシャム双生児を生み出すこととなってしまった“枯れ葉剤”を大量投下した地域だ。

 

 入り口で2ドルの入場料を払い、ガイドの説明と、解放戦線の戦いの記録映画を見る。

この映画は、日本語版もあるようだが、2台のバスのツアー客、70〜80人のうち日本人は6〜7人だけだから当然、英語版。

 クチトンネルのガイドもいるのだが、私たちのバスのガイドは、ここの説明は十分知っていて、その上、自分が、かって、アメリカ軍と一緒に戦った兵士だったので、自ら、意気揚々と説明していた。

 その後、うっそうとした林の中を歩いていくのだが、時々“パーン”という音がして驚く。

アルバイト先の人から「地雷に気を付けてね」なんて、冗談半分に言われたことが思い出された。 

もちろん、これは地雷のはずはなく、観光客を驚かせるために、林の中の道のあちこちに糸を張っておいて、そこを通ると、バクチクか何かが、鳴る仕掛けになっているのだ。   

 

 観光客用に、入り口を広げた、地下トンネルが何箇所かあり、そこへ入ってみたが、大変。

“暑い”“暗い”“狭い”3拍子揃った場所。良くこんな所に、6万人ものの兵士が、生活していたと感心する。

私でさえ、ほんの50mの距離を手をつき、膝をつき、喘ぎながら進んだのだから、体の大きい西洋人観光客は大変。

まぁもともと、アメリカ軍の兵士が、侵入出来ないように作ったと言うのだから無理もない。

 

   “ や ぁ 〜 疲 れ た ”

 帰りのバスの中は、みんな疲れて、ひっそり。

雨季特有のスコールのような雨が降出したので、それでなくてもオートバイやら自転車で混雑している道が余計に混んで、予定より1時間遅れで、シン・カフェに無事到着。

 

 

 

雨 で も 傘 は 必 要 な い ?

 雨季だから夕方になると、雨が降りやすい。日本の夕立のようだ。

ずっと降っているわけではないし、その後涼しくなるので、歓迎ものなのだが。

傘をさしている人が、いない。オートバイや自転車の人は、常時ポンチョのようなものを持っているらしく、雨が降り出すと同時に、道路はポンチョ軍団で埋まる。

歩行者はと言うと、軒下で待機しているのだ。中には、濡れるのも気にしないで歩いている人もいることはいるが。

ほとんどの人は、雨宿り。

傘をさして、先を急ぐのは、せっかちな旅行者ぐらいかもしれない。

私たちは2人とも、もちろん折り畳み傘を持ち歩いているので、雨が降ると、余計に目立った。

 

 

暑 さ 対 策

この季節にベトナムに行くのだから、暑くないはずはない。

と言っても、ホーチミンは一年中寒い時はないわけだが。

暑さ対策を考えたのにはそれなりのわけがある。5年前、インドに行ったとき、ニューデリーを観光しながら、暑さでバテた経験がある。特に倒れたなんて言う大袈裟なことではなかったが、ところかまわず、木陰を見付けると、腰を下ろしていた。

東京も、昨年、今年の猛暑は物凄く、ベトナム・インド以上かもしれないが、何と言っても、家にいれば、クーラーがあるし、電車もバスももちろん寒すぎるぐらい。

それに比べると、ベトナムは、ホテルから一歩出ると、クーラーの効いているのは、高級レストランぐらい。

 

 そこで、まず 帽 子。

 主人は布製の折りたたみ帽。私は、麦藁帽でも持っていこうかと思ったが、かさばるので、現地調達することにした。

ベンタイン市場の近くで、初日に、7000ドンで現地の人がかぶっている“ノン”と呼ばれる傘の形をした帽子?を購入。

この“ノン”はなかなか便利だ。首までしっかりと日除けになるし、多少の雨なら防水もしてあるので濡れない。

おまけに、透し模様まで入っていた。

 

 次に、 飲 み 物 の 確 保 。

日本のように何時、どこでも水道の水が飲めるわけではない。

自動販売機があるわけでもない。結局、店のある所で、ミネラルウォーターや缶ジュースを買うのだが、私たちは、

日本でも、1本のジュースを一人でいっぺんに飲まないし、喉が渇く度に缶ジュースばかり飲んでいたら、余計にバテテしまう。

普通は、ミネラルウォーターを持ちあるく人が多いのだが、ぬるくなった水を飲んでも余りおいしくない。(贅沢なのは、わかってます。)

 

そこで、登場したのが、今年から我家の一員となった

  “ ス テ ン レ ス ・ ス リ ム ボ ト ル ”これはいいですよぉー。

もちろん“スリム”だから少ししか量は入らない。でも、ひとくち冷た〜いジュースを飲むだけで生き返るんだから。

本当は、ジュースではなく、アイスコーヒーといきたいところだが、売ってないのでしょうがない。

少しぐらい重たくたって何のその。近所のスーパーで“先着100名:¥1,000.−”のときに、思いきって買っておいてよかった。 

 

 缶ジュースと言えば、これがベトナムの物価からすると高い。

輸入品も多いのだからしょうがないのかもしれないが、ホーチミン市内でも、観光地でも大体 6,000ドンから9,000ドンぐらいする。1本70円ぐらいと思えば、そう目くじら立てるほどでもないのだが、最近ダイエーなどで38円コーラやジュースを見ているせいか、異様に高く感じる。ベトナムうどんと呼ばれる“フォー”が一杯3000ドンしかしないのに。

 

 ただひとつ分かったことは、冷えていない缶ジュースは安いのだ。

ベンタイン市場の近くにある“インターナショナルマーケットの2階にあるミニマート”“レックスホテルの裏手にあるスーパー”などは、店自体は珍しくクーラーも入っていて、ほとんど輸入品ばかり売っているのだが、棚にある缶ジュース類は冷えてないが、1本4,500ドンぐらいだった。

 冷蔵庫が普及していないベトナムでは、氷で冷やす事が高級なのだろう。

私たちがよく買ったのは、ベンタイン市場近くのお店で、1パック1リットル入りのオレンジジュース。

11,000ドン。安くはないが、おいしいし、量も多い。ホテルの冷蔵庫にいれておけばよいわけだ。

 あと、安くて、おいしかったのが、“統一会堂 展望室”で売っていたベトナム製の紙パック入りフルーツジュース。

1個、2,000ドン。

 ベンタイン市場近くのお店で色がまるでアイスコーヒーのような缶を見付け、

主人が「これ買おう。」「でも、“Birds nest”って書いてあるよ」「すみません、これコーヒーですか?」「NO−。」クスクス笑う店員さん。「“Birds nest”?」「YES。」

やっぱり、本当にあの“鳥の巣”なのだろうか?知りたい気もしたが、恐ろしくて、試飲する気になれなかった。

 

 

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