現地ガイド/ドライバー登場

*ファトゥマさん

 ホテルのロビーで8時半待ち合わせ。彼女は、時間ピッタリに私たちの前に登場。

Ms.FATMA YORGANCI(ファトゥマ・ヨルガンジュ)。

これから4日間お世話になる彼女は、ちょっと眠そうな目で、自己紹介した。

日本を出発する前から彼女の名前は分かっていた。

 現地に着くまで、ガイドのことは何も分からないのが普通だと思っていたので、S社のYさんが、「ガイドは女性がいいですか?」と聞いてきたのには驚いた。

そんな事リクエストできるなんて知らなかった。

女性同志の旅だと、女性ガイドをリクエストするそうだ。ふ〜ん。

なるほどと思いながら、“もし か っ こ い い男性ガイドだったら、そのほうが旅が楽しいかも!”なんて思ったりもする。

「夫婦で行くので、どちらでもいいです」と答えた。

だが、夜帰ってきた主人にその事を言うと、

 「 女 性 の 方 が い い な ぁ 」 と ! 

 “まあ女性のほうが一般的に親切かもしれないし”と私も思い、翌日Yさんに連絡。

 

 アトランタの女子マラソンの金メダリスト ファトゥマ・ロバさんと名前と同じだったので彼女の名前は直ぐ覚えられた。

彼女は何と、アンカラからバスでここに着いたのが、深夜3時。

眠そうなはずである。(と思ったが彼女はどうやら朝は苦手らしい)

 トルコは11月まで旅行シーズンで、ひと月のうち、休みが1日か2日。

それも8〜12日間ぐらいの日本人グループツアーを、空港へのお出迎えからお見送りまで、繰り返し行っているのだ。

昨日もH・I・Sの17人/10日間のツアーをアンカラで見送った後、国内線の時間に間に合わなかったため、バスで来たらしい。

「宮本さんは、JTBですか・HISですか?」と聞かれ、S社だというと、どうも初めて聞いた名前らしかった。

まだこの春から本格的にガイドを始めたばかりだからだろうか。

 

 しかし、日本語はとても上手だ。

彼女は、トルコで生まれた後、3才からずっとドイツ暮らし。

ドイツの大学を卒業した後、トルコに帰国し、アンカラ大学で、日本語を学びながらガイド養成学校にも通ったそうだ。

驚くことに、ドイツ語は完璧に出来、その上、日本語、トルコ語、英語、フランス語が喋れると言うのだ。

日本語よりもトルコ語の方が苦手と言うのには驚いたが、4か国語を一体どうやって覚えたのだろう?

なかなかの勤勉派のようだ。

しかし、真面目という堅い印象はない、良く喋ってくれるユーモアのある人だ。

 

 最近私は、日本語を習っている外国人の友達のまちがいをすぐ訂正する癖が付いているので、その事を言うと、嬉しそうに「私も、お願いします」と言う。

どうやら彼女の日本語はガイドとして十分通用するのだが、それだけでは満足せず、よりネイティブに近づきたいようである。

…と言う訳で、時々、即席日本語教室が、道中開かれることとなった。

 

*フセインさん

 ドライバーの名前は、これまた知名度の高い、フセインさん。

イラクでは人気の高いフセインだが、トルコでフセインと言う名前だと、余り大きな声で言えないのではないだろうか?

トルコでは男は全員2年間の兵役があるわけだが、50年前の日本人が戦争に出征する時のように、“フセイン!万歳!”とは言いづらいだろう。

20才を筆頭に3人の子を持つお父さん。見るからにいい“パパ”という感じ。

やはり、仕事は忙しいようだ。

 

 この4人での3泊4日の旅が始まった。

車は、韓国製/HYNDYのワゴン車。新車だ。8人乗りのワゴンに4人だけなので、凄く贅沢だ。

足を前に伸ばせるし、クッションも良かった。この車のお陰で、1,500Kmにも及ぶ、旅も何の疲れもなかった。

 

 予定では直ぐパムッカレに向かうのだが、エーゲ海を明るいときに見ておきたかったので、ちょっと寄ってもらうことにした。イズミールのエーゲ海沿岸は、かなりヨーロッパ的な雰囲気を持っていた。

 

*えっ! コーヒー3杯にチップ10万TL?

 

 トイレをカフェでかりた後、ファトゥマさんが、コーヒーを頼んでいたらしく、座っていた。

“トイレだけを借りるわけにはいかなかったのかなぁ”と思ったが、どうも私たちにコーヒーを挨拶代わりにごちそうすると言う。

ガイドさんから、奢って貰えるなんて思ってもいなかった。

 そして「宮本さんは、たばこを吸いますか?」と聞かれた。

一瞬“どういう意味だろう”と思ったが、主人は吸うので「はい」と答えると、嬉しそうに「じゃぁ私も吸える」と言うのだ。

彼女はかなりのスモーカーなのだが、お客さんが吸わないと、食事の後など吸えないので、大変らしい。

日本人は、最近吸う人が減ってきているので、大変なようだ。

私たちの前の17人のツアーは一人も吸わなかったそうである。

 こうして私以外の3人は、いつもプカプカやっていた。

トルコ人の寿命が、日本人より10年も短いのはタバコのせいじゃないかと思うほど、喫煙率は高い。

 

 彼女が支払ってくれた後、10万TLもチップとしてテーブルに置いた。

“トルコでは、高級レストランなどは、10%ぐらいチップがいるのかなぁー”と言うぐらいにしか考えていなかったので、コーヒー3杯の値段はいくらだったか知らないが、

「いいサービスだったので」と言う彼女の一言には少々驚いた。

               

「トルコでは、給料は安いので、チップがないと大変です。」

という彼女に、多少は、最後にお礼しよう思っていた私たちではあるが、

“ガイドさんもそうですか?”とは聞けなかった。

                                         

 日本人は、チップの習慣がないし、サービスはしてもらって当たり前、その分料金に入っていると言う考え方が根本にある。

 だから殆どのグループツアーに参加している人は、現地ガイドやドライバーにチップをあげたことはないだろう。

食事の時だって、自分が頼んだ飲み物の金額しか払わないだろう。

確かに、日本の旅行会社が設定しているツアーには、旅行代金に含まれるものとして、団体行動中のチップが入っている。

 全く個人で旅行していれば、喫茶店や露店の食堂でも、トルコ人はチップを置くと言う事を知らないままだろう。他のトルコ人が皆そういう考えかどうかは知らないが、遠い外国からきている日本人が、サービスを良くしても全然チップも置かなかったら“金持ちなのにケチ”と言われている気がする。

 

 しかし、モスクワから来たせいもあるだろうが、トルコ人は本当に愛想がいい。

こちらが “ ニ コ ッ ”とすれば、必ず “ ニ コ ッ ”としてくれる。

 やはり、笑うことのできる唯一の動物である“人間”は、この微笑みを忘れないでほしい。

ガイドのファトゥマさんが、“どんなに忙しくても、コミニュケイトが大切なこの仕事が好きです。”

と言っていたが、言葉は通じなくても、微笑むだけで、お友達になれたりするのである。

                  

                                        

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