*地図に無い駅から汽車に乗ってアンカラ駅に行く
アンカラ大学からクズライ地区に行く途中に汽車の駅があったのだが、どの地図にも載ってない。
手当たり次第に「英語わかりますか?」と尋ねる。
大体の人は、「NO」と言うが、全くわからない人は、こちらの質問がわからない訳だから
「何いっているのだか、あなたの言葉はわからない」と言う事をトルコ語で言って来る。
しかし、親切な人が多く、英語がしゃべれる人を連れてきたりしてくれる。ここでもそうだった。
尋ねた高校生は、全くしゃべれなかったが、その彼が、少したって、たぶんクラスメートで頭のいい友達を連れて来た。
「ここにくる電車でアンカラ駅に行けるの?」
「アンカラエキスプレスに乗りたいのだけど」「OK OK」という。
時刻表を見ると、あと10分ほどで来る予定だ。一人2万TL(25円)のチケットを買いプラットホームで待つ。
しかし、20分しても電車は来ない。
何度尋ねても間違ってはいない。しかし、英語が本当に通じているのか怪しい!
ほんの少ししか、英語が分からなくても、親切なトルコ人は相談に乗って来る。
英語が少しできても、「I dot´t know」という日本人とは多違い。
次に尋ねた人は、結構わかるようで、「いつも遅れる」という。
アンカラ駅で10時にファトゥマさんと待ち合わせをしているので、タクシーで行こうか迷っていると、やっと、20分遅れで、汽車がやってきた。5分もしないうちにアンカラ駅に到着。
“ローカルの汽車は、当てにならない”と言うガイドブックのコメントは当たっていた
彼女は、ご主人と一緒だった。なかなかのハンサム。
隣の駅から汽車で来たと言うと、「最近出来たばかりの駅で、私たちもまだ乗ったことがないのに」と驚いていた。
どうりで、地図にも載っていなかったわけだ。
*アンカラエキスプレス
“夜行寝台列車”というのは、いつもわくわくする。
カナダのバンクーバ→バンフ、中国の北京→上海に続く国外では3回目の乗車。
2人用のコンパートメント型式。洗面所も付いている。タオル、ミネラルウォーターも!
ファトゥマさんはなんとこのままイスタンブールから10日間ツアーのガイドに行くことに急遽なってしまったそうだ。
そこで、隣のコンパートメントに一人で乗るはずだったが、ご主人も何とイスタンブールまで、一緒に行くというのである。
どうやら、年上のご主人のほうが寂しがり屋のようだ。
そう言えば、移動中の車にも、ご主人から携帯電話に掛かってきていた。
「食堂車がありますが」と言うファトゥマさんの言葉に、私たちもコーヒーをのみに行くこととした。
食堂車は、発車と同時に直ぐに一杯になる。
ちなみに、アンカラエキスプレスは定刻に発車した。
フアトゥマさん達は、ステーキなどの料理も注文したようだ。
夕食は食べて来たらしいが、「ここは食堂車なので頼みました。とても安いです」と。
どうやらおなかは空いていないが、頼まないと悪いので、頼んだようだ。
メニューを見ると確かに安い。料理1品が、15万TL(180円)ぐらい。
飲み物は、4万TL(60円)ぐらい。
“夕食、食べてこなければ良かったなぁ”と思った。普通、寝台車の食堂車といえば、高いイメージがあるし、夜、10時30分の発車なので、バータイムだと思っていた。
なかなか雰囲気のある食堂車は、殆どトルコ人のようだった。
ファトゥマさんのご主人は、トルコ語しか話せないので、彼女の通訳で会話を楽しんだ。
本当に仲の良いカップルだ。
新婚のように見えたが、もう結婚して7年とのことだった。
ここの食堂車は本当にお勧め。
ただし、トルコ人は喫煙率が高いので、1時間もすると、目がいたくなるほど、煙が充満していた。
髪の毛まで、すっかり煙草の匂いが染み付いてしまった。
ファトゥマさんのご主人が、私たちの分まで、支払いを済ませてしまい、年下の彼女たちのおごちそうになってしまった。
う〜、申し訳ない。 “おごちそうさまでした”
*朝食 IN アンカラエキスプレス
まだ暗い6時半にガラガラと鳴らす鐘の音で目が覚めた。
朝食はイスタンブールに着いてから食べようと思っていたが、昨夜の食堂車が良かったので、7時ごろ2人で食べに行く。
メニューは一つだけで、至ってシンプル。
トルコの普通の朝食、パンとチーズ、オリーブの実、チャイとゆで卵。豪華なホテルの朝食は、外人観光客に合わせて、アメリカンスタイルだったので、やや寂しい感じはするが、食欲がそんなにあるわけでもないので充分である。
英語の分かる乗務員が、サービスをしてくれた後、支払いをしようと、
「HOW MUCH」と聞くと 「 7 0 万 T L 」と言う。
聞きまちがえたかと思い、もう一人のトルコ語しか分からない人に、電卓を叩いてもらうとやはり、「70万TL」。
昨日のメニューがとても安かったし、確か昨日のメニューにもBREAKFAST14万TLと書いてあったので、二人で、30万TL(400円弱)ぐらいだと思っていたのでチョット不思議。
2人でレストランで肉料理も頼んで、50万TL〜60万TLだっただけにおかしい。
しかし、英語の分かる乗務員とトルコ語しか分からない人の二人ともそう言うので、仕方なく25万TL札を3枚渡す。
お釣をくれる様子もない。
“そうか、チップかぁ”と思いながらそのままコンパートメントに戻る。
ガイドブックにも、一人分180円ぐらいと書いてあるのだが、本当に1人分450円にも値上がったのだろうか?
それとも…。でも大した金額ではないし、人を疑うのはやめよう!!
しかし、マクドナルドのバリューセットを日本で食べるよりも高い朝食、果たして、真相は…。
アンカラエキスプレスは予定を30分遅れて、イスタスブールに到着。
ファトゥマさんご夫妻とは、ここで本当にお別れ。
もしかしたら、単なる3泊4日の観光見物だけで終わっていたかも知れないツアーを実に充実したものにしてくれたのは彼女のお陰だ。
ツアーの成否はよくガイド、添乗員にかかっていると言われるが、本当に実感した。
ファトゥマさんが、道中話してくれたことを少し書いておこう。
* クルド民族のこと
世界各国の新聞を毎日のように賑わしているクルド民族に関する記事には、誤報が多いこと。
“クルド”と聞けば、独立を求めて、いつも民族同志でもめごとを起こし、それがもとで、イラクとアメリカの関係を複雑にしている一部の少数民族のようだが、“トルコ現国会議員の90%はクルド人だし、私たちもそうです。トルコは、他民族国家なので、どういう人が、本当のトルコ人かなんて、決められません”という彼女の言葉は、島国の私たちにはない感情がこもっていた。
* 日本人添乗員とトルコ人現地ガイド
グループツアーで、ある一定人数以上の場合は、日本から添乗員が付き添うことが多い。
参加人数が多ければ、添乗員の分の旅費が出せることと、現地でのグループの取りまとめのためだ。
10人以下で、日本から添乗員がいないよりも、人数が多くても、日本人添乗員がいたほうが、いろいろと楽なのではないかと思ったが、
そうとも限らないようだ。
特に、何度もトルコに来ているような添乗員がいる場合だと、ちょっと観光する順番が違うだけで、
“どうしてこちらを先に行かないのですか”など今までと少しでも違うやり方だといちいち言われたりするらしい。
トルコ人ガイドはドライバーと道路の状態などを考えながら相談して、スケジュールを決めるのに、その後いろいろ言われたら、またドライバーとも相談して変えなくてはならず、大変らしい。
−何も分からない新人添乗員のほうがやりやすいそうだ。
確かにそうかもしれない。現地ガイドとドライバーは始めて顔を合わせることも多いので、お互いに性格が分かっているわけでもない。そこに、うるさいベテラン添乗員が、自分のやり方をいちいち指図してきたら、気まづくなるだろう。
ツアー客の方は、日本人添乗員のことは、“引率の先生”のように慕っているだろうから、ガイドと添乗員が、違った指示をすれば、日本人添乗員に従うだろう。
日本人添乗員がいなければ、ツアー客も現地ガイドともっと親しくなれる場合が多いと思う。
*トルコの近代化と、懐古主義
1923年10月。民族分裂の危機にあったトルコを救ったのは、後にアタチュルク(トルコの父)の尊称を送られたムスタァ・ケマル。
彼によって、政教分離、一夫多妻制の廃止、アラビア文字に代わるローマ字の採用、男子のトルコ帽、女子の黒いヴエールの禁止などトルコの近代化が一挙に進められた。
しかし、最近では、イスラム文化を守ろうとする人々によって、懐古主義も起こっているようだ。
先日NHKテレビにも、“イスタンブールのイスラムファッションブーム”を紹介した番組があった。
実際出会ったトルコ人の女性は、地方では、既婚者と見られる人のほとんどが、家の中でもスカーフを被っていたし、イスタンブールでも、かなり多くのイスラムファッションと言われるスカーフにゆったりとしたコートのようなものを着た人を見掛けた。
私たち観光客にとっては、独特なイスラムのムードが無くなって、近代化が進んでしまっては、どこの国に行っても同じ様でつまらなくなってしまうとさえ感じてしまうが、トルコの近代化を進めたい人にとっては、このような懐古主義は迷惑なようだ。
ファトゥーマさんも、ファッションのみならず、トルコの発展の為には、もっと産業技術などの進んだ国との輸入・輸出などを政府に勧めてほしいそうだ。
しかし、イスラム教徒が99%というトルコがここまで、西洋と同じような近代化を進められたのはすごい。
新技術を否定し、工業社会化ができず、利子なども禁じられていたため資本主義も育たなかったイスラム教の国がこのアタチュルクという一人の人の改革によって現在のようなトルコに作られたと言っていいようだ。
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