謎 の モ ス ク ワ

 

*アエロフロート航空

 

“飛んでイスタンブール”とは、昔流行った歌謡曲。

しかし、飛んで着いた所はモスクワ。

アエロフロートでまずモスクワに入り、ここでソユーズというトランジットホテルに一泊して、翌朝の便でイスタンブールに行く訳である。

成田空港では、我がアエロフート便は貨物運搬便などと並んで、バスで5分ほどした所から出発した。

成田を飛び立つ時、1時間遅れ、そのままモスクワに予定の時刻を1時間オーバーして到着。

“遅れましてスミマセン”などというアナウンスは無し。

スチュワーデスとスチュワード(今ではフライトアテンダントというが)が同数ぐらいいるのだが、皆さんとっても無愛想。

ニコリともしない。なかなかハンサムな人もいるのに勿体ないことだ。

 

“Please smile ”と言って、反応を見たくなってしまう。…が、できない。

 しかし、機内食がなんかとっても“Good”。もちろん成田発なのだから、日本で作っているのだが、少量づつセンス良く盛り付けられていて、なかなかおいしい。

アエロフロートを担当しているのは、どこの会社だろうか? 

今までいろいろな飛行機に乗ったが、今までで一番良かった。

タオル・歯ブラシなどのセットも配られたのは初めてだ。

 

モスクワ到着後、トランジットホテル行きのシャトルバスが出ると言うゲートへ行くが、薄暗く誰もいない。

シャトルバスに乗り遅れたら大変と、意気込んで早く来たのに…。

私たちが乗ってきたアエロフロート便は、イギリス行きだったので、殆どの人は、目的地がイギリス。

あとは、モスクワ同日乗り継ぎでベルギーに行く人や、私たちのようにトランジットホテルで一泊して、

翌朝他国へ行く人と、ロシアへ入国する人である。

その中で、翌朝ブタペストへ行くと言う人の、「去年もだいぶん待たされましたよ」という一言で、

数人の日本人と共にじっと待つ。

やっと係りの人がきて、トランジットの手続きが始まったのだが、これが何故だかとっても時間がかかる。

それからも、成田を1時間後に出発したモスクワ便の乗客の手続きもして、古いバスがやっと来たのは、モスクワ到着予定だった5:20PMから4時間後の9時すぎ。

入国していない私たちは、このホテルから一歩も出られない。

 

 

*ホテル“ソユーズ”

 

 ソユーズと言うホテルはバスで15分ほどのところにある立派なホテルなのだが(一人6,000円もする)

部屋に入ると、綺麗だが、飲料水も置いてないし、歯ブラシ・シャンプー・リンス類もない。

キャラメルみたいなむきだしの石鹸のみ。

トイレットペーパーの質も悪い。ロシアの物不足を物語っているようだ。

テレビは勿論ロシア語のみ。下の売店に行ってみると、缶コーラ類が約2ドルもする。

どうせそんな事だろうと、家から持ってきていたスーパーの58円缶コーヒーを有り難く飲むことになる。

 

 夜11時といっても、日本時間では、夜中の3時。お風呂に入り寝ることになった。

これは正しい選択だった。

“翌朝フライトに合わせた空港行きのシャトルバスが出る30分前にモーニングコールを鳴らします。”

 とフロントに英語のメッセージがはってあったので、多分10:25発の私たちへは、7時半ごろだろうと思っていたのだか、まだ真っ暗な6時半にけたたましい音で、起こされることとなった。

 フロントへ降りていくと、他に4人の日本人がいた。

私たちは、9時半発のフライトでブタペストに行く彼女らに合わせられたらしい。

古いとはいえ、大型バスの経費節減だろう。

 ホテルを8時30分前に出発する客には、朝食代りの缶ジュース・パン・チーズ・お菓子などの入ったビニール袋を渡される。

早朝のブレックファーストと言うのはここではないようだ。

 

 ホテルのフロント、空港などで、笑っているロシア人を見かけなかった。

何を尋ねても、無愛想に答えるだけ。

中国の店員もそうだったが、アジア人とは違いなんとなくあのシベリアンハスキーのような瞳で睨まれると、怖い印象を受けた。

 ホテルから空港に向かう途中から見る高層アパートには、日曜日の朝7時だと言うのにかなり電気が灯り、寒いバス停では、多くの人がバスを待っていた。 

 

*幻の赤の広場

 

 モスクワ半日トランジット中、ひとつ不思議な事と言うか、残念なことがあった。

空港でバスを待っているとき一緒だった人が言うには、昨年、ホテルから1人30ドルで、市内中央のクレムリン、赤の広場などに夜のツアーが出たというのだ。どうやらドル稼ぎが目当てらしい。

モスクワを観光したことのない私たちは、「えー?やったー」と喜んでいた。

 空港でトランジットのチェックを受けた後、空港の制服を着た女性から、そのツアーの誘いを受けた。

空港職員からの勧誘には少々驚いたが、1人20ドルでビザ無しでも問題ないと言う有り難い話に、即、OKした。

去年参加したという彼女も、「去年は、夏でまだ明るかったので、今回は、夜のクレムリンを見たい」と張り切っていた。

「去年は、ホテル代が2,000円しかしなかったのに今年は3倍にもなったからツアー代が下がったのかなぁ」とも言っていた。

 他の人は、英語でのツアー勧誘に戸惑い、断っているようだった。

私たちも、その去年参加したという彼女の話がなければ、ちょっと戸惑ったと思う。

空港職員の勧誘だし、何の疑いもなく待っていた。

 

しかし…。その後私たちの泊まる「ソユーズホテル」と言う呼び声が掛かった。

私たちは、そのまま待っていて良いのか、その人に聞いても、「そんなツアーは知りません。」と言うだけ。

「空港から直接市内にいき、2時間ツアーの後ホテルに行きます。」

と言ったその女性の姿もなく、“このままこのホテルのシャトルバスを無視してこの空港に取り残されたら…”と言う雰囲気に勝てず、渋々ホテルのシャトルバスに乗ることとなった。

 あの空港職員はどこへ行ったのか名前も聞いていないので尋ねようもない。

1人20ドル払おうとしたとき「あとで」といった意味が、もしかしたら、人数が集まらなければ、行かないと言う事だったのだろうか? 確かに、私たち4人だけだったら採算が合わないのかもしれないが、“とりやめるならそう言ってくれてもいいじゃないか”と思った。

 

ホテルに着いてからも、去年同じソユーズホテルから行ったという彼女が、フロントに聞いたりしたが、「ビザが無い者は外出できない」の一点張り。

「去年、ツアーで行った」と駆け寄っても「I don´t know」

 その言い方に、これは、この1年の間に取締りか何かあったのだろうと想像する。

ホテルでは斡旋できなくなったので、直接空港から出掛けるツアーを組んでいるのかなどと、想像するが、想像する以上どうすることもできない。

 

 実際トランジットビザも持たないものが市内見物する事は、どう考えても違法だが、後で知った“6時間20ドル”と言うビザを取っても、ツアーに参加したかった。

 あのままホテルのバスを無視して、空港で待っていたら、ツアーのバスがきたのだろうか…。

それとも、空港で一夜を明すことになっていたりして。(う〜ん、知りたい)

                                        

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